「精霊、山の手」/菊尾
 
ん。私も何度か山を下りて家族に会うことを試みたのだよ。
 しかしダメだった。どうしても山から下りられないんだ。
 
 私はこのルールを前の住人から教えてもらったんだ。
 そう。今君が読んでいるこの手紙。
 こんな感じに私も10年前のあの日に知ったんだ。
 高橋くん。ここを下りたければ誰かをこの家に招待しなさい。
 ここで一泊してもらってその人が起きる前に家を出るんだ。
 そうじゃなければ君はここを下りられない。
 それだけは確かなことだよ。

 私が何故山の手と呼ばれているか。
 いや正しくは呼ばれていないがな。
 自分を現す代名詞としてあるのが「
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