「 ひたひた。 」/PULL.
はなおも濃くなり、それを薄めるようにわたしは、涙をこぼしていた。
三。
ティーカップは季節ごとに替わったが、どれもしっくりは来ず、結局皿だけが、次の季節に残った。
四。
ひと眼惚れ。とでもいうのだろうか?はじめての体験だった、雨宿りに店に入ってすぐに、眼が合った、奥のレジに持ってゆくと、スポーツ新聞の向こうから店主が眠そうな声で、
「それ、皿ついてないですよ。」
と言った、
「いいです。買います。」
そう答えると、店主はスポーツ新聞の端からちらりと、こちらを見て、
「物好きだねあんた。」
と言い、ぽつり、こうも続けた、
「半額でいいよ。」
[次のページ]
戻る 編 削 Point(7)