「 ひたひた。 」/PULL.
「いいんですか?。」
「いいのいいの、雨の日はいつも暇でね。あんた、今日はじめてのお客さんだからさ、いいのいいの、あ…包むもんがない。さすがにあんた物好きでも、このまんま裸じゃ持って帰れないよね、そうだよね、裸はまずいよね、あ…これでいいか。」
店主はスポーツ新聞の競馬欄をびりりと裂いて、
「どうせこんなもん、その時々の運だしね。運ようん。うんうん。アテにならないよこんなもんは、天気予報と同じでさ、先週も当たらなかったしさ。うんうん。運だようん。」
とぶつぶつと言いながらそれでも、丁重に包んでくれた、
「大切に使います。」
「いいのいいの。ほらさっさと帰らないと、また雨が強くな
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