フェンディの112万のコート/チアーヌ
 
ートの値段だった


わたしは笑顔を作り店員にそのコートを返した


その夜わたしはそのコートの夢を見た
朝目覚めると
別に悲しい夢じゃないはずなのに
胸が絞られるように悲しい感情が残っていた

わたしは何度も考えた
わたしの頭の中にはいろんな情景が浮かんだ

そのコートを着てわたしは
薄汚い酒場へ行きたかった
そして周りの人間にあきれられるほど酔っ払い
店を追い出されて道路で眠りたかった
そこはたくさんの車が通る場所で
眠っている間にわたしは

また別の想像
そのコート着てわたしは
クスリがたくさん撒かれるクラブに行きたかった
そこで思う存分頭をイ
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