夕張aika/大村 浩一
かりが目立つ静かな町
鹿の谷の高級住宅街は夏草に埋もれ
黒ずんだ板で塞がれまるで炭住のようだ
ひとつの炭鉱も残ってはいないのに
正午を告げるサイレンが谷間に響き渡る
昔の夕張駅がいまの「石炭の歴史村」
博物館の模擬坑は空気が綺麗過ぎる
黒い粉塵もガスの噴出もなければ
坑夫たちの熱い汗も抗う息吹きも無い
大規模な機械化で切り抜けようとしたが
一度も目標を超せないまま事故で閉山
その時の最新の採炭機械が
デモ運転でやみくもに大きな音をたてる
併設の大きな遊園地は今は閉鎖中
おとぎの汽車さえも途中から廃線跡
施設を廻る観光バスは30分毎に来る
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