夕張aika/大村 浩一
 
来るけど
坂に苦しむ町の人を乗せる事はない


ほんとうに行きたかったのは錦沢のスイッチバック
そこに12万人の夕張のための遊園地があった
廃線跡のサイクリングロードはトンネルで通行禁止
高速道路が出来れば消される思い出


財政破綻のあとは市民会館も
小さな図書館も学校も緊縮財政で閉鎖
黄色いハンカチ振って文化の街と言いながら
通りにはまともな本屋の1軒も無い


東京からの携帯電話が不意に鳴り出すと
もう帰る処はどこにもないとあの娘は泣き出した
猛きものも ついには滅びぬ
ひとえに風の前の塵に同じ


セーコーマートのベンチのお婆さんは
何も言わず
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