マドイホタルのはなし/あすくれかおす
 
れだけで充分なんじゃないかって。


(マドイホタルのお尻が輝きだす。
その不思議な光を手に取ろうと、男の子が手を伸ばす。
けれども光は淡く螺旋状に広がって、車の中から窓の外に吸い込まれていった)


男の子はしばらくぼんやりすると、後部座席特有の眠気におそわれて寝てしまった。


マドイホタルはもうそこにはいない。
いや、はじめからそのようなものは、いなかったのかもしれない。


・・・・・・・・・・・・


街灯の光、ろうそくの光、螺旋状の光、モニタを眺めるあなたの、目の光。


光は戸惑っているのかもしれない。

世界に溢れる、無数の思いに。

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