マドイホタルのはなし/あすくれかおす
 


同時に光は、懸命に呼応しているのかもしれない。

目の前にある喜びや楽しさ、哀しみや切なさにたいして。



後部座席で目覚めた私は、妙な角度のまま窓の外を眺めている。

トンネルからいくつもの光を投げつけられて私も、ホタルになったような気分になった。



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そっとつかまえた 
ゆるくにぎった
窓をあけたら
すぐ逃げてった

後部座席は小さなぼくの街
両親の声も遠くのほうから
飽和していく低い音
外側の速さも 
いつのまにかスローモー

雨粒は大声で 
静けさを街に閉じこめて
半透明にゆがんだ顔の 
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