潰れた酒屋の勝手口をノックしているハスキー・ボイスの若い女/ホロウ・シカエルボク
 
た、ふたつ
「娘さんに乾杯しようや」


「そりゃ忘れないよな」
俺は女の顔を見ずに言った
本当にここの娘だったらそうしたほうがいいのだろうなと思いながら
それで、と彼女は言った
少し声がかすれたような気がした――もっともはじめから結構なハスキー・ボイスだったけど
「それで、ここの人はどこへ行ったの?」
さあな…、と俺は言った
「俺はあまり飲まないんだ、その日は家に客が来る日でね…少しは酒も用意しとく必要が合った」「次に誰かのプレゼントを買いに、不意に思い出して立ち寄ったときには、もう、閉まってた」「派手な閉店セールをやったらしいよ」
女はしばらくのあいだ黙っていた
「も
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