潰れた酒屋の勝手口をノックしているハスキー・ボイスの若い女/ホロウ・シカエルボク
ビスだ」
「なに?」
「缶ビールをサービスしてくれたんだ、二本だったかな」
「…それと娘の話になにか、深い繋がりでもあるの?」
「娘の誕生日なんだ、とやつは言った」「おめでとう、と俺は答えた」
「そんなにめでたい話じゃない」と、酒屋の主人はとうてい笑っているとは言えない笑顔を浮かべた
「出ていったきりなんだ――もう何年も前に」
俺は黙って頷いただけだった、そういうときにかけてやる言葉なんてまずないものだ――阿呆か善人の振りをするつもりでもなけりゃ
「厳しくしすぎたんだ」「俺のヘマでかみさんが出ていっちまったからね」
「どんなふうにすればいいのか判らなかった、一度もだ」
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)