潰れた酒屋の勝手口をノックしているハスキー・ボイスの若い女/ホロウ・シカエルボク
この酒屋はやっていないぜ、と俺が言うと
シャッターの前に腰を下ろして
俺のことを手招きした
俺は酒を振舞う変わりに
彼女の誘いにちょっとだけ乗ることにした
「お酒が欲しくてここをどやしつけてたわけじゃないのよ」
と
彼女は言った、確かに、瞳はしっかりしていて
アル中とか、その他の様々な依存症とは
縁が
ないようだ
すると、と俺は推測した
「君はここの娘さんなんだな、15の頃に家を飛び出したっきりとかいう…」
「――そんな娘がいたの?」
「一度ここの主人にそんな話を聞いたことがあるよ」
「どうしてそんなこと覚えているの?」
確かに――と俺は考えた
「サービス
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