森の夢ー古いボート   /前田ふむふむ
 
気まぐれが、強い風を吹かせて、
おまえは、勢いよく進むが、
森の硬質な赤い血がざわめいて、風をたしなめる。
ふたたび、おまえはゆっくりと湖面を歩く。
美しい娘の、繊細な櫂の動きに合わせて。
夜のとばりが醒めるころ、
美しい娘を乗せる、白い馬がみずを飲みに来るまで、
おまえの優しい夜は、永遠を流れつづける。
過去の鮮やかなページの中で。

     4

名もない鳥が飛ぶ、
  みずの音が、わずかに聴こえる。
    みずうみは、森の靄のなかで、孤独に佇む。
       
零落する秋が、枯野にとどまるわたしに、
失われた遠いひかりを抱かせる。
目覚めはじめる朝が
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