森の夢ー古いボート   /前田ふむふむ
 
っている。

     3

青い時間の空隙を埋めるように、
一艘の古いボートが湖岸で眠っている。
かつては、恋人たちが乗り、愛を語り合い、
親子を乗せて喜ばせただろう。
今は、打ち捨てられて
船底には大きな傷口が開いて、萎えた体液を
溢れさせている。

傷口は傷むか。悲しいボートよ。
おまえは、今日も、そこで朽ち果てたままで、
眠っているのか。

時間の一ページが剥がされて
ゆらゆらと空を舞う、
青い月を煌々と照らす夜が、翼を大きく広げて、
美しい娘がおまえに乗って、みずうみを流れてゆく。
月に導かれながら、湖面をゆっくりと弧を描いて。
時より、夜の気ま
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