豆腐/鈴木陽
間的に、科学的に、随筆的に、健康的に、それは豆腐であることを止めはしない。そこで豆腐は宗教となる。頭という頭は、滑らかな豆腐の角にしたたかに打ち付けられる。ことごとく砕けて豆腐。まるい豆腐。四角い豆腐。絹ごしのつややかな豆腐。木綿で絞られ、小刻みに揺れる豆腐。陶椀に乗る豆腐。きりりと冷えた豆腐。それは豆腐の甥である醤油や、豆腐の親類である塩をかけて食ってもよいだろう。また味噌をつけて食ってもよいだろう。豆腐の地平を示威する豆腐にはやはり冷えた豆腐であるけれども、味噌汁にももちろんあう。焼いても豆腐は新しい。煮物に存在する豆腐も、それはまた格別にうまい。豆腐はあらゆるものを内包する。忘れてはいけない
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