豆腐/鈴木陽
 
の豆腐にむしゃぶりつけば、それは清らかな白みを残して心の中で再帰する豆腐。そしてどこまでも、心の中でばらばらになる豆腐。ここで一度立ち止まり、豆腐の心を箸で十字に割り開いては手皿を添えて頂くも、ほんのりと甘く清廉に辛い透明さの上で、豆腐でない豆腐を見つけることはできない。

そして心の中にある、まっさらな対角線と知り合ったとき、そこに豆腐はある。豆腐の雪が降る。いっそう白い豆腐がわれ先に指を突き上げる。僕らの心はふるふると揺れ動き、そこでとうとう崩れ去るだろう。崩れた白みにふつふつと丸い豆腐があり、豆腐の幾何学が世界を分節化し、豆腐の海図は豆腐の海へ僕らを駆り立てる。客観的に、叙情的に、行間的
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