豆腐/鈴木陽
る真の豆腐から涼しく流れ出る豆腐の露が喉を潤し、そして僕らはどこまでも豆腐であり、真っ白の地平には豆腐の花が咲いている。その美しさ。いかにも食べ物と言いえる淡白な蛋白質が、豆腐という白さにつなぎ止められ、やがて永久にとどまる。ぷるんとした弾力を残して。
豆腐が豆腐としてあるならばそれは巨大な存在として彼方より飛来する豆腐である。一面に豆腐の豆腐の街。豆腐の廃屋には淡い光かそうでなければ死とでもいったように、純粋な豆腐の扉がついていたが、豆腐の取っ手を取り持って引っ張れば、それはあっけなく崩れ、ぼろぼろとこぼれるもろさと、はじける白い水に豆腐の心は胎児に帰り、豆腐のように耐え切れず手のひらの豆
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