沼の主/チアーヌ
 

 赤い瓦屋根に、白い壁。玄関前のポーチはクリーム色のタイル。見たこともないような花が玄関脇に植えられ、風、じゃない、水流に揺れている。見たことはないが、きれいな花だ。が、しかし沼の底に花など咲くのか。造花かもしれない。そう思って見ると、その花々はまるで安い造花のように色鮮やかだった。そして、白い格子のついた可愛らしい出窓には、アーチスタイルのレースのカーテン、そしてやはり花の鉢植え。
(おもちゃのようだな。まるで、リカちゃんハウスかなんかみたいだ)
俺はぼんやりとそう思った。
「さあ、ここよ」
女が得意気に言った。
「何なんだ、ここは」
「わたしのうちよ。素敵でしょ」
「なんだかち
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