沼の主/チアーヌ
なさいよ」
女は諭すように言うと、俺の手をしっかりと握ったまま、泳ぎだした。
水の中で、女は自由自在に動いているのだった。
水の精なのだから、当然なのかもしれないが。
俺と女は、奥へ奥へと進んで行った。
深い深い沼の底へと。
そして、沼の底は暗いものだと、俺は勝手に思っていたのだけれど、そんなことはなく、辺りはただいつまでも薄ぼんやりと明るいのだった。
「さあ、ついたわ」
女はそう言うと、沼の底にすうっと足を着いた。
俺も同じように、沼の底に立った。
ぬる、とした妙に温かい沼底の泥の感触が、俺の足の裏を包んだ。
俺の目の前には、一軒の家があった。
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