海に似た形の、しかし実体のない女を語るように/2TO
あるかぎりにおいて、それは「作者」でもある。「私」が「書く」とは、そのような「他者」との関係であり、その意味において、まさしく「私とは一人の他者である」のだ。
さて、彼らは何を望め闘争しているのか。それは「書く」ことの「主体」である。「影」は「作者」に代わってその主体的存在を取り戻そうとする。「影」は自身が主体でないかぎりにおいて、その欠如を欲望する。「欲望は、或る存在しないもの〔存在の只中で無化する無〕、つまりは他者の欲望、他者の渇望する空虚、他者の自我に向かわなければならない」(コジェーヴ)。そのような死をかけた闘争のなかで、「彼女の影は生まれたり死んだり」(第一連)する。
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