海に似た形の、しかし実体のない女を語るように/2TO
 
 しかしながら、その闘争に勝敗がつくことはない。何故ならば、それは「明滅」という光と影との「反復」のうちに捕らわれているからである。詩行の進むうちに、「作者」と「彼女の影」は代わる代わるその座を入れ替えているが、それはあくまでも「身体」に統合された「作者」における葛藤でしかない。

 そのような「反復」は、第二連の「フローリングの冷たさの上に頬をあずけて、明滅する夕暮れが彼女の頭蓋骨をどこまでも引き伸ばしていく」という詩行に、より象徴的な形象として現われている。据え置かれる「引き伸ばされた彼女の頭蓋骨」とは、まさしくヴァニタス(虚栄)、あるいはメメント・モリ(死を忘るな)の図像学的な表出であり
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