海に似た形の、しかし実体のない女を語るように/2TO
 
いて全体像を曝しているからである。また、それだけではない。その「影」とは(作品中に「女たち」、「友達」、「女の子」といった様々な三人称が散見されるにもかかわらず)、必ず「彼女」という二人称に結び付けられている。つまり、この作品において問題となる「影」とは、「彼女の影」なのである。

 したがって、作品に(書き)落とされた「影」とは、「彼女」という一人の、そして内在的な「他者」である。このことから以下のことが明るみに出されよう。すなわち、「作者」の抑圧するものは、「彼女の影」として表される、何者かの「他者」である。しかしながら、その「他者」とは、「彼女の影」が「作者」の「影の、そのまた影」である
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