海に似た形の、しかし実体のない女を語るように/2TO
 
と誘うのである。すなわち、「見出すことのできぬ死であり、みずからを忘れ去る忘却であり、忘却のさなかにあって休みなき想起であるところの忘却」(ブランショ)。

 足元には角が取れるほど旧い肋骨が一つ転がり、それをつみなさいとだけ微笑んでいる

「角が取れるほど旧い肋骨」を「つみなさいとだけ微笑んでいる」のは、まさしく「もうひとつの夜」である。しかしながら、それをつかむことはできない。なぜなら「夜間の体験」・「夜の体験そのもの」となった作品は、作者がそれを要請すると同時に「その作品が不可能性の試練にさらされるような時点へと惹き寄せてゆく」ものであるからである(ブランショ)。この「夜」
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