海に似た形の、しかし実体のない女を語るように/2TO
夜」の闇のなかには、ただ「象の鳴き声」だけが、虚ろに響き渡っている。おそらくそれは「不在」という人称代名詞である。だが誰の? 「作者」、「彼女」、または「女たち」、あるいは・・・・・・? この問い、この「微笑み」が、また私を『夜の門口』へと誘っていく。
しかし実体のない女を語るように
その実体を透して低音の昇華をわずかに語るように
私が今宵考えるのは沼地の舌をもつこの粘液性の夜ではない
殺戮と合体の夜ではない
―――トリスタン・ツァラ 『夜の門口』
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