海に似た形の、しかし実体のない女を語るように/2TO
 
き声は低く、夜はいつもこうだった、彼女の家の窓から見えるもの、死にかけた街灯が海の中へ沈んでいくとき、その足元、深海に近い場所をコートの襟を立てて歩いている。

 その隔たり、「差異」の確認された「夜」に「象の鳴き声は低く」鳴くのであるが、そこに「深海に近い場所をコートの襟を立てて歩いている」ものがいる。この一行には一見主語のないように見えるが、むしろそれは主語(となる主体)が要請されていないからではない。むしろ「彼女の足をほんの少し傷つけた」この「差異」は、この「夜」において別の「人称代名詞」となる「パルス」―――「象の鳴き声」を要請している。それはブランショの語る「もうひとつの夜」へと誘
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