善悪の部屋/葉leaf
 
本足りない。毛布は叫びたがっているが、口がないのでどこから叫んでよいか分からない。僕の脚が静止しながらも微細に揺れるとき、毛布はそれに従うだけである。僕は立ち上がり、窓から外を見る。相変わらずの日光の行進ぶりだ。庭木は形と音と匂いを忘れ、かろうじて色だけを覚えている。日光の吐き棄てた唾が葉の表面で光っている。看板の裏側は歯痛で覆われている。砂利の隙間を洗濯する、敗訴したウィルスたち。善悪の音節は少しずつ粒化していく。疲れた政治が花弁を撒き散らす。再び部屋の中央へと戻り、床板に統治される。椅子を構成する力が一瞬見えなくなって、椅子に座るのがためらわれる。椅子は極めて材木的に力を創り出したので、再び僕
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