大力の女/チアーヌ
していた。
うちの社の正面玄関は、ちょっとした表通りに面している。
彼女はそれを見て、たぶん、この状態は外聞が悪いと思ったのだろう、ナイフを持った男になにやらささやき、男と一緒にエレベーターの方へ移動を始めた。
そのエレベーターは、社長室へ向かうものだったので、俺は青くなった。
(あの男を、連れて行く気だ)
人質としては、そうするより他にないのかもしれないが、社長室というのはかなり奥まった場所にあるので、あんなところにおかしな男を連れ込んだら、きっと皆身動きが取れなくなるはずだと思ったのだ。
警察だって逆に入りにくくなるだろう。
「いいか!警察に電話なんかしたら、すぐにこの女を殺すぞ
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