大力の女/チアーヌ
 
すぞ!俺は社長に話があるんだ!」
明らかに目が血走っている男が、エレベーター前で叫ぶ。
エレベーターの扉が閉まる前に、俺は階段を駆け上がり始めていた。

8階の社長室前に到着すると、ちょうど男と彼女を乗せたエレベーターの扉が開くところだった。
俺は社長室の扉を確認した。在室の札が下がっていない。
(なるほど、受付の彼女は、社長が今社長室にいないことを知っていたんだ)
男は興奮した。
「なんだよ!社長がいないじゃねえかよ!」
「そうですねえ....すみません」
彼女がいやにのんびりと言う。
彼女の首に回された男の腕が、興奮でブルブルと震え始めた。
「ち、ちっくしょう!」

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