大力の女/チアーヌ
「はい、ボクシング部でした」
「じゃあ女に腕相撲で負けるなんてことがあるわけないだろう」
「いえ、僕は全く自信がありません。あれを見たら.....」
俺はつい口を濁した。
「あれって何だ」
みなが俺に目を向けている。
俺の答えを待っているのだ。
(仕方ないか)
俺は、手元にあったビールを飲み干すと、話をはじめた。
とにかく、俺が今まで生きて来た中で、一番強いのは彼女だ、と思う。
美人で、すらりとしていて、気立てが良くて、しっかりもので。
彼女は受付に配属され、俺は情報管理部で働いていた。
俺と彼女は、同期入社で、何気なく話をする仲ではあったけれど、でも、それだけだっ
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