大力の女/チアーヌ
うな感じで、クスクスと笑い始めた。
鉄パイプを指で摘むようにして折りながら、クスクスと。
男は、その様子に、不意に恐怖を感じたらしい。
彼女を突き放すようにすると、走って逃げ始めた。
「お、追いかけろ!」
いつの間にやら、俺の後ろに立っていた社長が、慌てて叫んだ。
男は、屈強な男性社員たちに、ただちに取り押さえられた。
俺が話し終えると、場はしーんと静まり返ってしまった。
「そ、そんな話、本当かね」
「本当です。その場にいたものは、みな、その様子を見ていましたから」
「しかし、そんなこと、あるのかね。でもそういえば、前からちょっと不思議だったんだ、社長があの女性を社長室秘書
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