それにそれはあっという間に思い出したというだけのものになってしまう/ホロウ・シカエルボク
 
てる、ほんの数百メートルを歩くのにガソリンが要るのさ、これと言って目的の無い移動は決まって燃費を悪くするとしたものだ――このパン屋は昔もう少し橋に近いところにあった…その頃は販売もやってる工場で
もちろん店内で飲食が出来るようなスペースなんてなかった、そのせいかどうか判らないけれど
あの時のパン工場がいまここでこんなこじゃれた店になっているのだと気づくまでに凄い時間が掛かった、正確には…30数年
思い出を探りすぎると現実が上手く把握出来ない、俺は帰り道を辿る、思い出の中ではない、現実への帰り道
あの頃住んでいた家はもう駐車場になっていた
鶏や犬やジュウシマツを飼ったり、何処かから拾ってき
[次のページ]
戻る   Point(8)