それにそれはあっという間に思い出したというだけのものになってしまう/ホロウ・シカエルボク
てきた板に裏庭で火をつけようとした記憶の上に誰かが停車している、ひと月八千円とか、そんなくらいの契約で…トムとジェリー、みたいに幼い俺の残像はそこでぺちゃんこになっている、あの頃住処の隣には小さな旅館があって
旅館と俺の家とのあいだにある壁と壁の隙間にもぐりこんで、裏側の民家の壁を伝って…その先の通りへ出るのが好きだった、厨房から漏れてくる蒸気なんかを嗅ぎながら、カニのように横歩きで…あるとき俺は泥棒と間違われたらしくて、家に帰ると母親にえらく叱られた、あのときは何があったんだかてんで理解出来なかったけど
見知らぬ子供が自分ちの壁の上を這ってたら誰だって泥棒だと思うよなぁ
でも歳をとって泥棒
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