松井冬子 賛歌 /いねむり猫
 
ってくることを 

全身で 気配を探り 待っている

そのような恐ろしい幸福がやってくることを 恐れながら 待ち望んでいる

女達は 閉塞する男の社会が そのとき根こそぎにされることを 予感し望んでいる

そのような恐ろしい現実 私達を取り巻いているのに 巧妙に隠され 目を向けない約束になっている世界が剥き出しになる時を

骨と内臓と羽根と皮膚を取り去られた鶏肉の清潔さが 
首を一瞬ではねられた鳥の痙攣と血の噴出を 足のもがきと 床をこする音 脱糞と 切り離された首の中で瞬きする目を隠している

そのような 隠されていたものに浸される 恐ろしい幸福に満たされた絶望の中でし
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