松井冬子 賛歌 /いねむり猫
 
でしか 
本来の生と死が満たされないことを
深く 深く 感じているから

そのような絶望の中でしか 安らぎが訪れないことを
巧妙なテグスの罠に縛られて だれがその罠を引き搾り たぐっているかさえ分からないから

そのような虐待者を 搾取者を 殺人者を 心の破壊者を 見分けることができない絶望は
そのようなむき出しの現実の死と生の 
おそらくはありえない 起こりえない 生と死の絶頂
おそらくは訪れることはないと 分かっている エクスタシーの中でしか

その不平等 その差別 自分が自分を縛りつけている 
むごい仕組みを 抜け出すことはできないと
みな 知っているから

だから 恐ろしく やさしく 気高く 美しい 静寂の中の 死の中の息づく生の可能性を
その絵に みなが見ているのだ


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