松井冬子 賛歌 /いねむり猫
自分より気高い 生きる意味を見出す 己の欠落
海鳴りと潮風の中に 自分の生が刻一刻削り取られている 砂丘の虚ろ
あるいは 男の社会が 根本的に女達から奪っている ときはなたれ回収されることのない生
死を背景にしなければ その深い罠の姿さえ 訴えることができない かんぺきな閉塞
内臓の中にある死 内臓を奪われた肉だけになった生き物の死体
毛をそられ 骨を抜かれ 生温い湯で洗われた 死から遠ざけられた食卓
身食いする犬 自分の羽を抜きつづける鳥 自分の手首を切り刻む少女
死から隔てられ 自分を縛っているものの正体を知る手がかりを奪われている その絶望
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