「 手眼。 」/PULL.
開き、波打っていた。
強い力で引かれ下を向くと、手が、屋上の地面を掴み、根を張っていた。指はみるみる地面に食い込み、食い込んでゆくごとに強く下に引かれ、指が、地面の中を伸びてゆく。不思議なものでそうなるともう生えているような、もとからそこに根付いて生えていたような気にもなり、日の光が欲しくて見上げると、そこにはやはり太陽はなく、手が、波打っているのだった。眺めているうちに手は段々と近くなり、見えているものすべてを手が覆い尽くし、手が、視界になった。
手に向かって伸びているのだろうか、それとも手の方がこちらに近づいてきているのだろうか、そんなこともうすぼんやりと考え、ただひたすら下に向かって
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