桜が逆さまに空から落ちてくる天気の良い昼下がりに/しめじ
 
報じるブラウン管。夢の島で暮らす友人が鯖にあたって死んだのを不意に思い出した。ウィスキーが空だ。
 桜が逆さまに空から落ちてくる天気の良い昼下がりに、ワイングラスを肴にカタコンベを飲み干そうと言っている友人のY氏とともに新宿通りの十字路の上で横たわる。ビー玉がそこかしこで踏みわられていて、悲鳴が、犬の悲鳴が、助けなくてはとY氏はエッグノックを飲み乾して、ホルスターに鰆を挿し、一心不乱に都庁ビルにバケツで水をかけていた。悲しい時代になったものだね、と豚に話しかけると、灯火が揺れる丘の上で私は二度よみがえります、とはっきりした声でしゃべったので驚いて振り返ると、永田町では魔女狩りが真っ最中で、箒を色
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