此方の景色/因子
 
のだ。最初から。
そして今、上京し望み通り脱出に成功した私は、前向きにも後ろ向きにもなれない私は、やっぱり、どこへも行けないでいる。

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高校二年生のとき、担任の教師に進路はどうするのかと訊かれて東京の大学に行きたいと言った。何故、と更に質問されて私は俯いて自分の発言の理由をさがした。殆ど勝手に口から飛び出したその言葉に理由があるとするならば、それは当時学校の美術室の隅に隠すように置かれていた「東京」と題を付けられた描きかけの水彩画だった。その東京は赤味があったり青味がかっていたりするさまざまなグレーで彩色されていて、昼食を摂るために誰も居ないそこを訪れる度、新しい色がのっている
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