此方の景色/因子
いるのを見るのはその時期私にとって習慣化していた。
何故、の答えを口にしないまま、進路指導室を出たその足で美術室に行ってみるとそこには完成した「東京」があった。灰色に色づいて横長の画用紙に切り取られた東京の、その右下に小さくサインがしてあった。東京を描いた彼女の名前を私は唇を動かさずに呟いた。
彼女は隣の組にいて、友達が居ない子だった。隣の組の人間関係など私はまるで知らなかったが、休み時間や放課後、窓の外を覗けば大抵外の石段のところへ小さく腰を掛けている姿があった。次の予鈴まで動かない背中の細いラインは、私、ひとりなんです、と過剰に孤独であることをアピールしていた。それに
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