此方の景色/因子
心私を嗤っていたに違いない。
教室からエスケープする少女。日常からエスケープする少女。現実からエスケープする少女。思えば私が戯れに書き続けてきた幾つもの文章はすべて与えられた居場所から逃げ出す子供の話ばかりで、閉塞感と負の方向へ向かう力から生じたものたちの塊だった。編集者の目に留まった小説はその中のひとつだった。それらはそもそも子供の私が狭い教室の中で夢想した幼いゆめだった。そんな遊びの筈の妄想はいつだって、主人公がひとに見つかって捕まったり、誰にも見つからず野垂れ死んだり、野犬に喰われたり人に殺されたりして終了した。どこへも行けないことを、私は私から離脱出来ないことを、きっと私は知っていたのだ
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