此方の景色/因子
。実際は世間的に処女作と呼ばれるものが出版されたのがもう一年前のこと。作家と無職の違いは未だによくわからない。作家と呼ばれない時私は正しく無職である。
なにかで作家と呼ばれることがあってもそこには大抵侮蔑の色が隠れていたりする。私のように本物を生み出すことのできない小説書きというのは無職よりよほどたちが悪いのであって、それは侮蔑されてしかるべきなのだ。矢鱈と小難しい漢字や安っぽい片仮名の羅列で構成された文章は今自分で読み返してみても頭が痛くなるほど偽物臭い。登場人物の喋り方はまるで氾濫するジャパニメーションの模倣だ。だがあの編集者はそれでいいと言った。彼奴もあんなニコニコと表情を崩しながら内心私
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