霧に恋した/soft_machine
 

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今日は俺も元気だし
だからきみも元気だ
詩のことを喋るのはもうやめよう

それで済むならことは簡単だけど
ふたりきりの世界ですら
きみは自分も綺麗に見ようとするんだね

硝子越しの熱帯魚の求愛みたいに
居会えるなんて憧憬よりも
信じることができたって

今もどこかで誰かが誰かを
平気で裏切った
約束なんて
あってない

そんなもんさ
だからある日突然俺の世界が
消えてなくなっていたとしても

平気なきみはあばらを削った銘品のナイフで
またりんごを齧るだろう
てのひらに残った芯を大切に埋めて
明日に似た希望がやってくるのを待つのさ

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