春の日、膿んだ傷みの反芻/ホロウ・シカエルボク
たけれどもちろん何も変わるはずは無く、とたんにどんどん冷えていく胸のうちと、突然爪が伸び始めた誰かをなぞるためだった両手、さらすことを躊躇った傷がもうかゆくてかゆくて
叫ぶことが出来ない叫びというものを歌うためにどんなスペルを用意しようか、そんなものを得るためには
水が出なくなった噴水の吹き上げ口を探すべきなのかもしれない、僕は人工的なたまりの中に足を突っ込んで
裾を濡らしながらジャブジャブと歩いた、近くに腰を下ろしていた老婆がねえ、あなた、と声をかけた
もちろん僕は答えたりしなかった
噴出し口に片目を近づける、ちょうど顕微鏡を覗くときみたいに繊細な注意を払って
なにかが、映る
映ろ
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