春の日、膿んだ傷みの反芻/ホロウ・シカエルボク
映ろうとしたそのとき、警官が僕の腕をつかみ、噴水の外に引きずり出した「こんなところでなにをやってるんだ、ここに入ってはいけない、さあこっちへ来なさい」僕はぼんやりと彼の顔を見つめてみた、僕と同い年かあるいは少し上くらいの屈強な警官「なぜそんなことをする?」僕はぽかんとした表情を作って首を傾げてみた、もちろん彼が何を言っているのかは重々理解してはいたけれど
警官はもう少し何かを言いたそうにしていたけれど面倒になったらしく僕を噴水から遠ざけて去っていった「何をやっているかは全部判っていたさ」僕は演劇的にそうつぶやいた「そうだね」背後で声がした、僕が噴水に足を踏み入れたときに静止しようとした老婆だった
「パンでもお食べなさい、おにいさん」彼女はそう言いながら小さなビニール袋からあんぱんをひとつ取り出して僕に渡した「あたしは少し買いすぎちゃったから」そう言ってそそくさと去っていった
彼女が去った後僕はあんぱんを見つめながら
もう少ししたら暑い季節がくるのだなと
ふと、胸を傷めたのだ
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