龍との生活/角田寿星
を見たのだろうか
こんなところには霞はかかりはしないのに
はたして龍はタバコの煙には徹底的に弱かった
お粥をあげたら箸を使ってペロリと食べた
フクちゃんはテレビ台の下から出てこなかったけど
二昼夜ほどして ようやくお気に入りのクッションで丸くなった
でも耳はピクピク動いていた
部屋の真ん中に龍 行儀よくとぐろを巻いて浮かんでいる
チロチロと小さな炎を吐いている あ 鼻ちょうちん
新たに買ってきた空気清浄器の甲斐もなく
龍は日に日に弱ってちゃぶ台の上でぐったりとしていた
しかもフクちゃんまで思わぬ同居人に不貞腐れて
プチ家出をしちゃったんで
ぼくは龍を山に連れていく
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