『狐憑き』/しめじ
吹かないよ」と何度も忠告したが、妻は襦袢姿に裸足という体で縁側にぼうっと立って風を待っていた。
案の定妻は次の日熱を出して寝込んでしまった。床に入っている間もずっと風鈴を握って離さなかった。
熱は一向に引く気配がなかった。それどころかときどき咳き込むようになっていて、すぐにお医者を呼んだ。お医者は「流行病ですから心配いりません。暖かくして栄養をよくおとりください」と言って帰った。言われたとおりに部屋を暖かくしてご飯を食べさせていたがやはりよくならない。一時はサナトリウムに移そうかとも思ったが、そこまで大仰にするほどのことではないと妻に諭されやめた。
妻が三丁目の横丁にある「
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