記名の呪縛/岡部淳太郎
 
ペンネーム」なのであり、そこにはそうした表現行為に対する微妙な感情が表れているのではないだろうか。
 この文章を書いている私は岡部淳太郎という名前を持っている。現代の詩の世界には以前に比べて筆名を使う書き手が増えているように見受けられるが、ご他聞にもれずこの名前も筆名である。なぜ私がこんな筆名を選んだのか。別に深い理由があるわけではない。手っ取り早く言えば、本名をアレンジしただけなのだ。私の本名は乙部淳というのだが、昔から電話などで名乗る時に「おとべです」と言うと、よく「おかべさんですか?」と聞き返されることが多かったのと、二十歳前後の一時期、父親から「淳太郎」と呼ばれていたことがあって(ちなみ
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