記名の呪縛/岡部淳太郎
み、名前は存在するのだと。それはそれで合理的な考え方であるのかもしれないし、そのように考えた方が、記名された名前の呪縛に煩わされることもないのかもしれない。それに作品というものは、作者のネームヴァリューと関わりなく独立して存在するべきだとも思う。名前を頭に入れることで、作品の本質が見えなくなり冷静に批評することが出来なくなる恐れがあるからだ。名前は名前でしかなく、本来それだけでは価値を持ちえないはずである(余談だが、井川氏は件の文章で吉本隆明氏の名を出して、吉本氏が自分と同じように感じているということを自分の考えの後ろ盾にしているような感じがあってちょっといやらしい。吉本隆明というある種の権威を持
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