/渡邉建志
 
すら
なかった。手でもぎ取ろうとしても届かなかった。後ろに倒れて蜂を潰そうかと思ったが、気持
ち悪いし、余計毒を吐かれると堪らない。私はそこで立ち止まる。蜂の刺す痛みは治まるが痺れ
が腕に伝わってくる。蜂は暫くしてぽとりと落ちた。蜂の落下を感じながら私はそこに立ち尽く
していた。ここは表通りから見ると暗くて薄汚れた建物であるがその奥は縦長で道から離れてい
るため静かな露天風呂だ。ここは人が思っているよりずっと、心地よい





 清澄な瑞西の山上の湖に。空は広く木があらん限りに若々しく茂りそのスペクタクルの中を少
女がすっくと立っている。少し膨らみ始めた胸にペンダントが
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