思い出せない(いつのまにか死んでしまうものたち)/ホロウ・シカエルボク
ったんだ
毎日いつもつるんで遊んでいたのに
どうして顔も名前も少しも思い出せない
母親が笑いながら見ていたことだけは何故だか覚えている
女の子の背中を殴りつけたことがある
あれは多分五年生の時のことだ
転校生で、とても気の強い子だったから
なにかとても腹の立つことを言われてやりかえしたのだろう
だけど
何が原因だったのかなんて例によって少しも思い出せないのだ
たった一発だった
彼女は避けようとして背中を向けたのだ
だむ、という音がした、たった一発だった
彼女は泣いた
俺は狼狽して
廊下へ飛び出
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)