思い出せない(いつのまにか死んでしまうものたち)/ホロウ・シカエルボク
 
四年生の頃のことだった


お腹の辺りを
軽く蹴っただけだったと思っていたのだけど
ふざけて一目散に逃げたから気づかなかった
次の日先生にこっぴどく叱られた
そんなことをするつもりじゃなかった
ふざけて遊んでるだけのことだった
鼻血が出たのよ?そう言われたときの
違和感のことなどどうしてこんなときに思い出す









親友だったやつと喧嘩になって
指を思い切り踏んづけたことがある
あいつの名前は誰だったか
記憶の中にあった名前は
それより数年前に引っ越した奴の名前だった
あのときのあいつは誰だった
あのときのあいつはいったいどこの誰だった
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